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慢性腎臓病(CKD)


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おいしく 楽しく軽やかな糖尿病ライフ D:Light Plus

監修:京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学 教授 稲垣暢也先生

糖尿病ってどんな病気?

血糖とは

血糖の役割

でんぷんなどの糖質(炭水化物)は、私たちの生命を維持する栄養素として最も大切なものの1つです。糖質は消化されてブドウ糖(グルコース)となり、血液中から全身の細胞に取り込まれて、主なエネルギー源として利用されます。
血液中のブドウ糖を「血糖」といい、血糖値とは血液中のブドウ糖の量をあらわしています。

血糖値の調節のしくみ

食事をする、つまり炭水化物を摂取すると、そのほとんどが消化によってブドウ糖となり、小腸から吸収されて血液のなかに入るため、食後は血液中のブドウ糖の量(血糖値)が高くなります。
健康な人の場合、血糖値は「インスリン」やインスリンと逆の働きをもつホルモンのバランスにより、一定の範囲内にコントロールされています。そのため、食事や運動をしても血糖値が極端に変動することはないのです。

*インスリンとは
インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓などへ取り込み、血糖を下げる働きを持つ唯一のホルモンです。膵臓のランゲルハンス氏島という部分のβ細胞で作られ、血液によって全身に運ばれます。

インスリンイメージ

日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療の手びき2020 改訂第58版, p.2-4, 南江堂, 2020

糖尿病の原因

糖尿病とは、インスリンの作用が十分でないためブドウ糖が有効に使われずに、血糖値が高くなっている状態のことです。放置すると全身にさまざまな影響が出てきます。
糖尿病は、その原因により4つのタイプに分けられます。

1型糖尿病

インスリンを作る膵臓の細胞が何らかの原因でこわされることで、インスリンが作られなくなり、糖尿病になります。子どもや若年者に多くみられます。

2型糖尿病

インスリンの分泌が少なくなったり、働きが悪くなるために起こります。おもに中高年以降にみられますが、若年者の発症も増加しています。日本の糖尿病患者さんの約90%が2型糖尿病とされています1)
日本人は遺伝的にインスリン分泌が弱い人が多いといわれています。遺伝的な体質に過食(特に高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣や加齢といった要因が加わり、発症するとされています。このため、2型糖尿病は「生活習慣病」ともいわれるのです。
また、肥満がなくても、内臓脂肪が増える「メタボリックシンドローム」と呼ばれる状態になると発症しやすくなります。 1) 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療の手びき 2020 改訂第58版, p.18, 南江堂, 2020

糖尿病の原因イメージ

特定の原因によるその他の糖尿病

遺伝子の異常によるもの、ほかの病気や薬剤に伴って起こるものがあります。

妊娠糖尿病

妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常のことをいいます。妊娠中はわずかな高血糖でも胎児に影響を与えるため、糖尿病ではなくても「妊娠糖尿病」と呼びます。
妊娠中に胎盤が作るホルモンが、インスリンの働きを抑える作用もあるため、十分なインスリンが作られない場合に血糖が上昇します。肥満、高齢妊娠、家族に2型糖尿病患者がいる、過去の妊娠で高血糖を指摘された場合に起こりやすいとされています。

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症状

血糖値の高い状態が続くと、次のような症状があらわれます。しかし、軽症の糖尿病の場合、自覚症状がみられないことが多く、発見が遅れることがあります。

代表的な自覚症状

*尿の量が多くなる(多尿)
糖は尿に出るときに、同時に水分も一緒に出すために尿の量が多くなります。
*のどが渇いて、水分をたくさん飲む(口渇、多飲)
多尿のため脱水状態となり、のどが渇き、水分をたくさん飲みたくなります。
*体重が減る
糖が尿に出るために、体のたん白質や脂肪を利用してエネルギー源とするためです。
*疲れやすくなる
エネルギー不足と、体重減少により疲れを感じやすくなります。

自覚症状イメージ

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経過

2型糖尿病の経過

1型糖尿病では、尿が増える、のどが渇くといった症状が急に起こりますが、2型糖尿病では気づかないうちに発症し、ゆっくりと進行します。つまり、症状が無い状態のまま、糖尿病が進行していることがあるのです。また、症状が無いからといって血糖コントロールを行わずにいると、合併症を引き起こします。
患者さんによって経過は異なりますが、早期では食事や運動で血糖コントロールができますが、年を追うごとに難しくなり、内服薬さらにはインスリン注射による治療が必要になります。
治療によって血糖値がほぼ正常にまで改善しても、糖尿病そのものが治るというわけではありません。治療を中止すると、ふたたび血糖値は高くなってしまいます。定期的な検査と治療を続けることが大切なのです。

2型糖尿病イメージ

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合併症

血糖値が高い状態が長く続くと、合併症が起こる可能性が高くなります。治療をきちんと行い血糖コントロールをすることで、新たな合併症が起こるのを防ぎ、また、起きてしまった合併症の進行を抑えることができます。

細小血管症

細い血管にみられる糖尿病に特徴的な合併症です。「糖尿病の3大合併症」と呼ばれる病気を指します。

*糖尿病網膜症
網膜の血管が障害され、目のかすみ、視力低下などがあらわれ、症状が進むと失明してしまうこともあります。少なくとも年に一度は眼科の検査を受けましょう。

糖尿病性網膜症イメージ

*糖尿病腎症
糖尿病により腎臓の働きが悪くなると、血圧が上昇する、尿中にたん白が出る、体がむくむなどの症状があらわれます。さらに症状が進むと、血液中に老廃物がたまり、腎不全や尿毒症など生命にかかわる重篤な症状を引き起こします。このように慢性に経過する腎臓病のことを慢性腎臓病(CKD)といいます。
なお、腎不全になってしまうと、人工透析を受ける必要が出てきます。透析導入の原因の第1位は糖尿病腎症です。
>> 慢性腎臓病(CKD)

糖尿病性腎症イメージ

*糖尿病神経障害
神経と神経のまわりの細い血管が障害され、信号がすばやく体のすみずみまで伝達するという働きが低下します。手足のしびれ、ほてり、痛みなどがあらわれます。
一方、足の感覚が麻痺して、傷があったとしても気づかずに放置してしまい、足の潰瘍や壊疽になることもあります。足は清潔に保ち、常に注意を払うようにしましょう。

糖尿病性神経障害イメージ

日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療の手びき2020 改訂第58版, p.24-29, 南江堂, 2020

大血管症

大きな血管の病気である動脈硬化により起こる合併症で、脳卒中や、心筋梗塞、足の壊疽などがあります。動脈硬化は糖尿病があると進行しやすくなり、合併症による深刻な状況を引き起こす原因になります。また、脂質異常症、高血圧、喫煙、肥満、加齢なども動脈硬化の危険因子ですので、血圧やコレステロール値などの検査も定期的に受け、血糖のコントロールに加えて、コレステロール値や血圧、肥満の改善、禁煙に取り組みましょう。

*脳卒中
脳卒中にはいくつかのタイプがありますが、代表的なものは脳梗塞と脳出血です。脳の血管が詰まるタイプの代表が脳梗塞で、脳の血管が破れるタイプの代表が脳出血です。そのうち、糖尿病患者さんに多いのは脳梗塞です。手足の麻痺や言葉が急に出なくなる、ものが二重に見えるなどの症状がみられ、重症の場合は生命に関わります。また、血管が完全に詰まっていなくても血流が悪くなり、頭が重い、物忘れがひどい、怒りっぽいなどの症状があらわれますので、これらの症状がある場合は、ただちに医師の診察を受けましょう。
脳卒中は命にかかわるだけでなく、手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ることもあり、患者さんはもちろん、ご家族の生活にも影響を及ぼします。
*心筋梗塞
心臓の筋肉(心筋)に栄養や酸素を送る血管(冠動脈)の動脈硬化によって引き起こされる病気で、心臓の働きが著しく低下し、生命にかかわることがあります。糖尿病患者さんは冠動脈の疾患を起こす危険度は高い2)とされています。
症状としては、胸が締めつけられるような強い痛みがあらわれますが、糖尿病患者さんでははっきりした症状がみられないことがあるため、心電図による検査を定期的に受けましょう。また、息切れしやすい、脈が途切れる、体がむくむなどの症状は、心筋梗塞の前触れの可能性があります。 2) 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド 2020-2021, p.88, 文光堂,2020
*末梢動脈性疾患
足の血管の動脈硬化により血流が悪化することで引き起こされます。足やふくらはぎが痛くなり運動ができない、休みながらでないと歩けない(間欠性跛行(かんけつせいはこう))などの症状があらわれます。運動ができなくなり、生活の範囲も制限されてしまいます。
さらに症状が進むと、潰瘍や壊疽を起こしてしまい、足を切断しなければならない場合もあります。

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検査・診断

検査項目

糖尿病の診断には、血液検査が必要です。次の4項目を測定します。

*HbA1c(ヘモグロビンA1c)
過去1〜2カ月の血糖を反映する指標です。糖尿病以外でも高くなることがあります。
*早朝空腹時血糖値
健康な人では、朝食前の血糖値が1日の中で最も低いとされています。
食事から10時間以上あけて測定するため、一般的には前日夜9時以降絶食として、翌朝食事前に採血します。
*75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)
糖尿病を最も確実に診断できる検査です。ただし、明らかに血糖値が高いことが推測される場合は、空腹時血糖または随時血糖を測定します。
早朝空腹時血糖値を測定後、75gのブドウ糖溶液を飲み、30分後、1時間後、2時間後の血糖値を測定します。
なお、糖尿病の診断には2時間後の血糖値を用います。30分後、1時間後の血糖値は、糖尿病の診断に必須ではありませんが、リスクが高い人を見出すのに役立ちます。
*随時血糖値
食事時間とは関係なく測定した血糖値です。

検査イメージ

診断

血液検査の結果が以下の条件にあてはまる場合、糖尿病と診断されます。

血液検査の結果イメージ

  • ①、②のいずれかに当てはまる場合、「糖尿病型」と診断され、再検査で同様の結果であった場合に、糖尿病と診断されます。
  • 空腹時血糖値が110mg/dL未満で、75gOGTTが140mg/dL未満であれば、「正常型」と判定されます*。ただし、@、Aを同時測定し、ともに糖尿病型であることが確認されれば、初回検査のみで糖尿病と診断できます。
    * 初回、再検査の少なくとも一方で必ず@を満たしていることが必要で、Aのみの反復検査による診断はできません。
  • 「糖尿病型」でも「正常型」でもない血糖値であった場合、「境界型」いわゆる「糖尿病予備軍」と診断されます。糖尿病に進行しないよう生活習慣の改善など、主治医の指導にしたがいましょう。

空腹時血糖値および75gOGTTによる判定区分

日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド 2020-2021, p.24-30, 文光堂,2020より改変

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2021年9月 CC-00016