小児のX染色体遺伝性低リン血症(XLH)を対象としたburosumab(KRN23)の第2相臨床試験結果に関するお知らせ

協和発酵キリン株式会社(本社:東京、社長:花井陳雄、以下「協和発酵キリン」)は、Ultragenyx Pharmaceutical Inc.(本社:米国、社長:エミル・D・カキス、以下「ウルトラジェニクス」)と当社の欧州子会社であるKyowa Kirin International PLC(本社:英国、社長:トム・ストラットフォード、以下「協和キリンインターナショナル」)が、本日、5歳から12歳の小児X染色体遺伝性低リン血症(XLH)を対象としたburosumab(KRN23)の第2相臨床試験において、良好な結果が得られたと発表したことをお知らせいたします。

本データより、血清リン濃度、くる病所見、成長速度、及びその他の運動機能に関するアウトカムがburosumabにより改善し、これらの治療効果が64週間の治療期間を通して維持されていたことが示されました。また、本試験とは別試験として実施中の1歳から5歳未満の小児XLH患者を対象とした第2相臨床試験において、24週間時点での中間解析データでは、血清リン濃度が正常域の下限で維持されました。有害事象については、これまでに得られたものと同様でした。なお、協和発酵キリンとウルトラジェニクスはburosumabの開発および販売に関するライセンス契約のもと、本試験を共同で実施しています。

小児を対象とした第2相臨床試験について(5歳~12歳を対象)

本試験は、多施設共同非盲検ランダム化用量設定試験であり、5~12歳までの52名の患者が登録され、その内49名は既存治療である経口リン製剤および活性型ビタミンD製剤の投与を受けていました。既存治療の治療歴は、本試験参加時点において平均で約7年間でした。全ての被験者は用量漸増期間および治療期間をあわせた64週の試験期間を終えています。全被験者のうち34名は、ベースラインのトータルRSSスコアが1.5以上でした。

血清リン濃度、TmP/GFR、血清1,25ジヒドロキシビタミンD濃度について

64週間の治療期間を通して、血清リン濃度および腎近位尿細管リン再吸収閾値(TmP/GFR)が平均値として増加しており、血清1,25ジヒドロキシビタミンD濃度も同様に増加していました。全ての被験者において血清リン濃度は正常値下限以上で64週間維持されたことは、本疾患の根本原因である”Phosphate wasting”を改善することで、血清リン濃度の改善が維持できることが示されました。

くる病画像所見の評価について

Thacher Rickets Severity Scoring(RSS)を指標とした評価

くる病の重症度はRSSスコアシステムを用いて評価しました。くる病所見は64週時点において統計学的に有意に改善し、2週に1回の投与を受けた被験者で、ベースラインでRSSスコア1.5以上であった被験者において、特に顕著な改善が認められました。被験者全体(52名)ではRSSスコアが51%減少しました(p<0.0001)。また、ベースラインでRSSスコア1.5以上の被験者(34名)はRSSスコアが59%減少しました(p<0.0001)。2週に1回投与の被験者(26名)はRSSスコアが58%低減し(p<0.0001)、2週に1回の投与を受けた被験者において、ベースラインでRSSスコア1.5以上の被験者(17名)はRSSスコアが62%改善しました(p<0.0001)。

Radiographic Global Impression of Change(RGI-C)スコアでの評価

くる病重症度の変化をRGI-Cスコアを用いて評価しました。64週時点での全てのグループにおいて、くる病症状の有意な改善が認められました。被験者全体(52名)では平均+1.57ポイント(p <0.0001)のRGI-Cスコア改善を示し、ベースラインにて重度のくる病所見を有する被験者(34名)は平均+1.98ポイント(p<0.0001)の改善を示しました。RSSスコアNews Release1.5以上の被験者において、77%(26名/34名)がくる病の十分な治癒(RGI-Cスコア+2以上)と評価されました。2週に1回投与の被験者(26名)では平均+1.62ポイント(p<0.0001)スコアが改善しました。そのうちベースラインでRSSスコア1.5以上の被験者(17名)は平均+2.08ポイント(p<0.0001)改善(十分な治癒)し、82%の患者さんがくる病の十分な治癒と評価されました。

成長速度の評価

ベースラインにおけるRSSスコアが1.5以上であった被験者は、より顕著に成長障害(ベースライン時身長のパーセンタイル値:5.84%)が見られ、これらの患者さんは、試験を通じてより大きな成長の改善が認められました。被験者全体(52名)における平均の成長速度は+0.55cm/year(p=0.0376)の改善であり、身長z-scoreは0.15(p<0.0001)改善しました。ベースラインにおいてRSSスコア1.5以上の被験者では+0.86cm/year(P=0.0175)の成長速度の改善が見られ、身長z-scoreは0.17(p=0.0016)の改善が認められました。2週に1回投与の被験者(26名)では、+0.73cm/year(p=0.0160)の成長速度の変化が認められ、身長z-scoreは0.18(p=0.0002)改善しました。そのうちベースラインにおいてRSSスコア1.5以上の被験者(17名)では+1.11cm/year(p=0.0076)成長速度が変化し、身長z-scoreは0.18(p=0.0063)改善しました。

身体機能の評価:6分間歩行テスト(6MWT)および患者報告アウトカム(PROs)

2週に1回の投与を受けた被験者のうち、ベースライン時点で歩行障害が認められた被験者(予測正常値の80%未満:14名)では、平均85メートルの歩行距離の延長が認められました(p<0.0001)。Pediatric Orthopedic Society North America/Pediatric Outcome DataCollection Instrument(POSNA/PODCI)を用いた身体機能の評価では、ベースラインで機能障害を有する被験者(ベースラインスコア40ポイント未満又は1SD以下:28名)において、本評価における5つの評価ドメイン全てに基づくGlobal Scoreは平均で+14.1ポイント(p<0.0001)改善しました。

1歳~5歳未満を対象とした第2相臨床試験について

約65%の被験者で注射部位反応が認められましたが、いずれの事象も軽度と判定されました。本剤投与と因果関係が否定できない重篤な有害事象は、1名で既に報告済みの事象(発熱及び筋肉痛)が認められていますが、その後、悪化もなく回復し、現在も試験継続中です。その他、死亡や試験の中止に至るような被験者は認められていません。血清カルシウム濃度および尿中カルシウムや血清intact PTHにおいて臨床的に意義のある変動は認められませんでした。また、血清リン濃度が正常値上限を超えた被験者は認められず、腎臓の超音波所見において臨床的に意義のある有意な変化を認めた被験者は認められませんでした。

安全性および忍容性について

本試験は、多施設オープンラベル試験で、既存治療である経口リン・活性化ビタミンD投与を受けている1歳から4歳の13名の小児が登録されました(平均年齢2.9歳)。本試験では64週間、burosumabを2週に1回投与し、その安全性、薬力学、そして有効性を評価します。試験開始時の用量は0.8mg/kgであり、試験期間中に1.2mg/kgまで増量することが可能です。全ての被験者が24週間まで本剤投与を完了した結果において、血清リン濃度の上昇が認められ、それらは24週の治療期間を通して正常値範囲内の下限域を維持していました。また血清1,25ジヒドロキシビタミンD濃度も同様に増加が認められ、アルカリフォスファターゼ濃度の顕著な減少も認められました。有害事象については、これまでの試験で観察されたものと同様でした。約23%の患者において注射部位反応が認められましたが、いずれも軽度と判定されました。なお、死亡や試験を中止するような被験者は認められていません。

協和発酵キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。

burosumab(KRN23)について
burosumabは協和発酵キリンにより発見された線維芽細胞増殖因子23(FGF23)に対する完全ヒトモノクローナル抗体です。本抗体はFGF23の過剰発現に由来した疾患であるXLHおよび腫瘍性骨軟化症(TIO)を対象として、ウルトラジェニクスと協和発酵キリンにより開発が行われています。FGF23は尿中リン排泄を増加させることで、血清リン濃度を低下させる液性因子です。FGF23はまた、腎臓における活性型ビタミンD濃度を低下させます。burosumabは、XLHおよびTIOの患者さんのFGF23の過剰な作用を阻害することで、腎臓におけるリンの再吸収を増加させ、腸管におけるリンとカルシウムの吸収を促進するビタミンDの産生を増加させます。
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