抗FGF23完全ヒト抗体KRN23の成人X染色体遺伝性低リン血症性くる病を対象とした第1/2相反復投与試験の結果発表について

協和発酵キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:花井 陳雄、以下「協和発酵キリン」)は、現在開発中の抗線維芽細胞増殖因子23※1(FGF23)完全ヒト抗体KRN23の成人X染色体遺伝性低リン血症性くる病※2(XLH)を対象とした第1/2相反復投与試験の結果を、2014年6月24日に「第16回国際内分泌学会議・第96回内分泌学会議」で発表しましたので、お知らせいたします。

本試験は、米国及びカナダで行われた多施設共同オープン用量漸増反復投与試験※3であり、成人XLH患者に対するKRN23反復投与時の安全性及び有効性を検討するために実施されました。本試験では、28名の対象患者に対し、個体内漸増法によりKRN23(0.05、0.1、0.3又は0.6 mg/kg)が4週毎に4ヶ月間皮下投与されました。

KRN23投与により目標血清リン濃度に到達した患者の割合は用量依存的に増加し、腎近位尿細管リン再吸収閾値※4(TmP/GFR)及び1,25(OH)2D濃度についても、統計学的に有意な上昇が認められました。また、骨代謝マーカーの検討では、KRN23投与による骨リモデリング※5への効果の可能性が示唆され、QOLの評価においても、KRN23投与による身体症状の改善が認められています。

安全性に関しては、第1相単回投与試験と同様に、有害事象の多くはXLH患者で一般的に認められる所見であり、血清リン濃度が正常値を超える患者は認められず、副甲状腺ホルモン、血清及び尿中カルシウム濃度に関しても有意な変動は認められていません。また、重篤な有害事象は発現せず、腎臓及び心臓での異所性石灰化※6、並びにKRN23に対する抗体発現も認められていません。

以上、本試験では、KRN23によるリン代謝の改善により、骨の再形成を改善することが示唆されるとともに、本剤の反復投与による安全性及び忍容性が確認されました。また、本試験の継続投与試験として実施された長期投与臨床試験においても、本薬の安全性及び有効性が確認されており、本年9月に開催される米国骨代謝学会年次総会において結果を発表する予定です。

協和発酵キリンは、KRN23の開発、販売に関して、ウルトラジェニクス・ファーマスーティカル(以下「ウルトラジェニクス」)と協業およびライセンス契約を締結しています。これまで実施した臨床試験の結果に基づき、協和発酵キリンとウルトラジェニクスは成人XLH患者での開発と並行して、欧米において小児XLHを対象とした臨床試験を本年開始することを計画しております。

  • ※1線維芽細胞増殖因子23(FGF23)
    FGF23は、主として骨組織で産生される251アミノ酸からなるポリペプチドであり、腎臓に作用し、腎尿細管でのリンの再吸収を阻害します。近年、低リン血症性くる病、腫瘍性骨軟化症、腎不全等の疾患におけるFGF23の関与が示唆されています。
  • ※2X染色体遺伝性低リン血症性くる病(XLH)
    XLHは、血中に高濃度で存在するFGF23により、体内のリンが過剰に排泄され低リン血症となり、その結果として骨の成長・維持に障害をきたす希少な疾患です。
  • ※3オープン用量漸増反復投与試験
    実薬とプラセボ(偽薬)あるいは薬剤の投与量を盲検化せず、用量を増加させながら(漸増)繰り返し投与を行う試験のことを指します。
  • ※4腎近位尿細管リン再吸収閾値(TmP/GFR)
    腎臓のリン再吸収機能の指標です。XLH患者では低値であり、リンが尿に過剰に排泄されている状態を示します。
  • ※5骨リモデリング
    骨の破壊と形成のプロセスのことで、生体内では常に古い骨を壊し、新しい骨を作るというサイクルが繰り返されています。
  • ※6異所性石灰化
    心臓や血管、関節などに骨の成分である炭酸カルシウムやリン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトなどが結晶化し沈着する現象で、沈着した組織や器官の機能を妨げる恐れがあります。
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