バルドキソロンメチル(RTA 402)に関する2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者を対象とした国内第II相試験について

協和発酵キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:花井陳雄、以下、「協和発酵キリン」)は、リアタ ファーマシューティカルズ(米国テキサス州アービング、CEO:ウォーレン・ハフ、以下「リアタ社」)から導入した低分子化合物バルドキソロンメチル※1(開発番号:RTA 402)について、現在中断している2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者を対象とした日本国内での第II相臨床試験の中止を決定しましたのでお知らせします。なお、本試験は中止しますが、引き続きRTA 402の当該疾患での新たな開発方針についての検討を進めます。

本剤の導入元であるリアタ社は、米国・欧州・カナダ・オーストラリア・中米において、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者を対象とした第III相プラセボ対照比較試験(以下、「BEACON試験」)を実施していましたが、安全性上の懸念があるとの独立データモニタリング委員会※2からの中止勧告を受け、BEACON試験を2012年10月に中止しました。BEACON試験の結果は、米国ジョージア州アトランタで開催された2013年米国腎臓学会年次総会(11月7日から11月10日まで開催)で発表され、同時に医学雑誌であるニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに論文掲載されました。

公表されたBEACON試験の結果では、試験期間中の全死亡は、RTA 402群とプラセボ群で有意な差はみられませんでしたが、心不全による入院または死亡は、RTA 402群でプラセボ群に比べ、有意に多いことが明らかになりました。主要評価項目である末期腎不全の発症または心血管イベントによる死亡は、両群で有意な差はみられませんでした。推算糸球体濾過量※3は、RTA 402群でプラセボ群に比べ有意に増加しました。

BEACON試験の結果から、本剤による心血管イベント、特に心不全の発現リスクが確認されたため、協和発酵キリンは、中断していた本剤の国内第II相臨床試験を中止することを決定しました。現在、患者背景情報とともに、BEACON試験で発現した有害事象のリスク因子を詳細に解析しています。協和発酵キリンは、これらの解析結果をもって本剤の当該疾患に対する今後の開発方針を検討してまいります。

協和発酵キリンは2009年12月24日に、リアタ社との間で、本剤の日本、中国、台湾、韓国および東南アジア諸国における独占的開発・販売権を取得するライセンス契約を締結しております。

  • ※1:バルドキソロンメチル
    バルドキソロンメチルは体内の250以上もの抗酸化因子および解毒因子の産生を調節する転写因子であるNrf2を活性化します。Nrf2の活性化は、細胞内の抗酸化因子の増加や炎症のシグナル経路の抑制により、組織を炎症から保護します。慢性の炎症は、2型糖尿病や、心血管イベントおよび慢性腎不全などの合併症を促進することが知られています 。
  • ※2:独立データモニタリング委員会
    治験依頼者によって設立され、臨床試験の進捗状況、安全性データおよび重要な有効性変数の評価を定期的に行うとともに、治験依頼者に試験の継続、修正または中止を勧告する委員会です。
  • ※3:推算糸球体濾過量
    腎機能の評価のために臨床的に用いられる指標で、血清クレアチニン値等を基に算出されます。値が低いほど腎機の働きが悪いことを示します。
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