抗体医薬品について

抗体医薬品のメカニズム

抗体医薬品は、さまざまな手段で病気と闘います。私たちの体に本来備わっている機能である中和作用、補体依存性細胞傷害活性(CDC)、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、抗体依存性細胞貪食活性(ADCP)、アゴニスト活性を応用したものに加え、バイオテクノロジーの進歩によって生みだされた抗体薬物複合体(ADC)、バイスペシフィック抗体などを応用した医薬品が注目を集めています。

抗体薬物複合体
(Antibody Drug Conjugate)

ADCはモノクローナル抗体と細胞傷害活性を発揮する低分子薬を、適切なリンカーを介して結合したハイブリット医薬品です。
ADCが標的細胞に結合し、細胞内に入ります。その後、細胞の中に入った低分子薬が作用を発揮し、標的細胞を撃退します。

バイスペシフィック抗体(T cell engager)
(Bispecific antibody - T cell engager)

従来の抗体医薬品は1種類のエピトープまたは抗原にしか結合できませんが、バイスペシフィック抗体は2つの異なるエピトープまたは抗原を認識します。抗原認識部位の数や位置、つなぎ方を変えることで、分子量の大小を含めさまざまな形態に設計することができます。最大の特長は、特異性の組み合わせによって、新規の機能を発揮できる点にあります。

例えば、T細胞抗原とがん抗原を認識するバイスペシフィック抗体はT cell engagerと呼ばれ、T細胞によるがん細胞への傷害活性を増強できることが報告されています。このようなバイスペシフィック抗体の作用を最大限に発揮させるためには、標的となる抗原に適した抗体分子の設計が必要です。

協和キリンでは独自のバイスペシフィック抗体技術を確立してさまざまな疾患へ挑戦しています。

中和作用
(Neutralizing activity)

侵入した病原体や毒素などの抗原に結合し、毒性を失わせて無力化します。
たとえば、がん細胞には、増殖因子などの刺激によって増殖するものがありますが、刺激を受け止める受容体に抗体が先に結合すると、標的細胞の増殖を止めることができます。
具体的には、がんの増殖シグナルを阻害する分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害剤などがあります。

補体依存性細胞傷害活性
(Complement Dependent Cytotoxicity)

抗体が標的細胞(がん細胞やウィルスなど)の抗原に結合すると、複数の血清タンパク質(補体)が次々と反応して活性化。すると細胞の表面で一連の反応が起こり、標的細胞を溶解します。

抗体依存性細胞傷害活性
(Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity)

がん細胞などの標的細胞の表面にある抗原に抗体が結合すると、その抗体がマクロファージNK細胞などの免疫細胞を呼び寄せ、標的細胞を攻撃する物質を放出して殺傷します。

抗体依存性細胞貪食活性
(Antibody Dependent Cell mediated Phagocytosis)

体に異物(病原体)が侵入すると、その病原体の表面にある抗原に対応した抗体が作られ、異物を食べて消化するマクロファージや、細菌を食べて体を守る白血球の1つである好中球を活性化。さまざまな病気の原因となる細菌やウィルス、がん細胞などを撃退します。

アゴニスト活性
(Agonist activity)

抗体が細胞表面の標的分子に結合し、シグナル伝達機構を活性化する働きのことです。その結果、細胞の状態を変化させたり、細胞死を引き起こしたりします。

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