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専門医からのメッセージ よりよい対策の参考に

たむら小児科クリニック

院長 田村 和喜先生

住所・診療科名

〒311-1134 茨城県水戸市百合が丘町8-8

TEL 029-240-0502

診療科名:小児科

たむら小児科クリニック 院長 田村 和喜先生

プロフィール

出身地:茨城県

専門:夜尿症、小児腎臓、小児神経

趣味:昔はテニスでしたが、現在は4歳と2歳の男の子と遊ぶことです。

先生にお話を伺いました

―夜尿症診療は何年ぐらい前から実施されていますか?また、始められたきっかけについて教えてください。

田村先生:10年ぐらい前から診療しています。小児科医になったときから腎臓について勉強してきていましたので、尿の病気としての夜尿症には以前から興味がありました。

―どのくらいの患者さんがおられますか?

田村先生:2002年12月に開院しましたので今年の5月で約1年半になりますが、300名を超える夜尿症の患者さんがおられます。開院するまでは県立こども病院で10年近く夜尿症を診ていたこともあり、全体では1000名以上の患者さんを見せていただいています。他県からの患者さんもみえますし、夜尿症の患者さんは潜在的にとても多いのではないかと思います。

―年齢や患者さんの男女の比率、受診の時期などについてはいかがでしょうか?

田村先生:他の病院でも同じだと思いますが、男の子が絶対的に多く、女の子の2倍くらいです。小さい子は4歳、大きい子では18歳くらいまでですが、6〜9歳くらいで受診される方が最も多いです。
4〜5歳は夜尿症とはいえないのですが、ご両親が心配されて来られることがあります。6〜7歳は小学校入学を機会におねしょを治したいと考えられるようです。10〜12歳では宿泊学習とか修学旅行を前にして、治療を希望される方が多いようです。時期的には、新しく学校が始まる春、受診の時間がとれる夏休み、それに生理的に尿量の増加する冬も多いです。特にどの季節に多いというわけではなく、1年を通して、お休みになると受診されるという感じです。

―もうすぐ夏休みですが、夏休み中に特に実施されていること、特別な対策とかはありますか?

田村先生:以前にキャンプを考えたこともあるのですが、現実には、患者さんがすごく多くて、なかなかまとまらず、実行できませんでした。診療は原則的に、はじめは本人に来てもらうのですが、遠方の方も多いため、毎回本人も一緒というわけにはいきません。それで休みを利用して膀胱の検査とか血液の検査をしています。
宿泊学習などの直前になって来られる方は、「それまでに治したい」といらっしゃるわけですが、幸いそのような例では、比較的年齢が高く(夜尿症は同じ治療でも年齢が高いほうが効果が上がります)、「無事に行けたよ」と報告してくれる方が大部分です。偶然夜尿症を診療していることがわかり、「宿泊学習はあきらめていたのに、ちゃんと行くことができました」とお土産を届けてくれたお子さんもいて、とてもうれしく感じたことがありました。
たむら小児科クリニック夜尿症の原因がはっきりしている場合は、治療にも反応がいいことが多く、短期間で効果が見られます。きちんと原因検索を行うことが夜尿治療の第一歩だと思います。

―主な原因とその治療法について教えてください。

たむら小児科

田村先生:尿を濃くする能力が未発達で、うすい尿が大量に作られる(低浸透圧型)、膀胱の大きさが年齢相当まで育っていない、膨らみ方が不安定で反射的に収縮してしまう(膀胱型)、睡眠が深く目が覚めにくい(覚醒反応未熟型)、の3つが考えられ、その各々に合った治療法を行います。
おしっこが薄い場合には抗利尿ホルモン薬*1を用いておしっこを濃くします。このタイプは一般に、治療に対しての反応が良く、効果があがりやすいので、宿泊行事などの直前でも、水分制限と抗利尿ホルモン薬でほとんどよくなります。

膀胱の発達は、大きさと、膨らみ方(ゆっくりと、安定した動き)を含みます。お薬である程度よくなりますが、すぐに夜尿がゼロになる例は少ないようです。膀胱訓練(日中おしっこを我慢する、おしっこを途中で止める)などの、日常生活の中での練習が効果的です。 睡眠が深く、膀胱に尿が一杯になっても、目が覚めにくい例にはトフラニールというお薬を中心に治療します。このお薬は、夜尿症の薬としては、一番古くから使われており、覚醒反応以外にも、正常な睡眠パターンを形成し、抗利尿ホルモンの分泌を促したり、膀胱への直接の効果も認められています。
患者さんの多くは、いくつかの原因の混合型です。年齢が低い子では尿の薄い例が多いのですが、膀胱の大きさ自体も小さいですし、3つの原因が、割合はさまざまですが、お互いに関連しあっている事がほとんどです。

―睡眠が深くてなかなか目覚めないという子に対してはどのような治療をされていますか?

田村先生:基本的にはトフラニール、アナフラニール*2を用います。あとは夜尿症ブザー(おねしょブザー)も使っているのですが、ヨーロッパのように良い成績は出ていません。ブザーが鳴ると本人は起きずに、周りの人が起きてしまうということになり、なかなかうまくいきません。

―起こすのはよくないという先生もおられますが、どうお考えでしょうか?

田村先生:夜尿症学会でも起さないほうが、最終的に夜尿症の治療期間は短くなるというコンセンサスが得られています。しかし、音で起こすおねしょブザーの有効性はヨーロッパを中心に広く認められていますし、脳波検査で睡眠が浅い時を見つけて起こす方法が有効であるという先生もおられます。実際、むずむず動いているときに起こすと失敗しないというお母さんもいらっしゃいますし、そのような例で夜尿が完治するまでの時間が長いということもないようです。ですから、睡眠の浅い時期を見つける事が出来れば起こしてもよいと思いますし、良い治療法になると考えています。しかし、現実的には、睡眠の浅い時期を正確に見つけるのは困難ですから、現時点では起こさないほうがよいと思います。

―生活指導ではどのような点に注意されておられますか?

たむら小児科クリニック 院長 田村 和喜先生

田村先生:水分制限が基本なのですが、トータルの水分摂取量を減らすのではなくて、夕方から寝る前の水分を減らし、その分できるだけ日中に飲んでもらうようにお話ししています。夏場はどうしても喉が乾きますから、まったく飲まないというわけにはいきませんが、氷をなめるなど、工夫しているお子さんが、良い成績を出しているようです。また、運動しているお子さんに多いのですが、汗をかくと当然水分を多く取りますし、疲れるため、睡眠も深くなり治りにくい例が見られます。運動の前、または最中に水分を摂り、どうしても喉が渇くときは運動の直後に飲んでもらい、就寝までの時間を空けてもらうこと。出来るだけ昼寝などをして、体を休めてもらうようにしています。

食事については一般的に水分の多いもの、塩辛いもの、カフェインが多いものは控えるようにしてもらっています。自分でちゃんとコントロールができる子、喉が渇いても氷1個程度で我慢することができる子はやはり治りが早いですね。

―治療方針についてお話いただけますか?

田村先生:年齢が低い子では同じ治療でも効果が少ない事がよく見られます。また、副作用の問題もありますから、効果のない薬を長く続けるよりは、一度中止して、1年間休んでから治療を再開すると有効である例も多いです。夜尿症の自然治癒率は年間15%とされています。治療をすれば、3倍以上よくなるのですが、それでも半数近くはゼロにはなりません。治療のゴールをどこに求めるかにもよりますが、無理なく、長く続けられる治療、生活指導でないと良い成果は得られません。

―続けられる生活指導とはどのようなことでしょうか?

田村先生:無理のない範囲、できる範囲の水分制限・食事制限と、規則正しい生活です。「おねしょと仲良くつき合いましょう」というのも変ですが、無理のない、自分のできる範囲でやってみること。食事制限なども、一人だけ薄味にするのは無理ですから、家族みんなで薄味にしたり、水分制限に関しても、その子だけ、夜に水を飲むなというのでなく、周りの人も協力できる程度にやっていくのがよいと思います。

―治療薬の服用期間はどのくらいがよいとお考えですか?

田村先生:ケースバイケースですが、効果がありそうだったら、副作用に注意しながら何週間か続けます。先生によっては2週間続けて1週間休むというように、決めておられるようですが、私の場合は一定にはしていません。効果のありそうな例では1ヶ月、2ヶ月と続けますし、効果がない場合はすぐにやめます。お子さんによっては薬を使っているだけで安心という例もあります。そのような場合、副作用さえなければ、少しずつ、本人と話し合いながら、減らしていくようにしています。

―ホームページ上に『おねしょ倶楽部』を開設されておられますが、どのような内容の相談が多いですか?

田村先生:いろいろな相談が寄せられますが、メールで相談される方は、皆さんよく勉強されていますし、他のウェブもチェックされている方が多いです。よくある相談は、「泌尿器科とか小児科の専門医のところに行ってもおねしょに関してはちゃんと診てもらえないし、納得する説明がない」とか「どこかよい病院を紹介してほしい」というものです。「紙オムツをしていた方がよいのか」「起こした方がよいのか」という具体的なご質問については答えられるのですが、「近くに夜尿症専門医がないが、どうしたらよいか」というようなご質問には回答しにくい面があります。
家内(副院長)が心理学の専門医でこのようなメールの相談によく答えているのですが、相談に来られるのはだいたいお母さんなので、女性同士の方が話しやすいのかもしれませんね。食事のことに関しても女性のほうが具体的に話せますし、言葉づかいも優しいので。

―心のケアで特に配慮されていることはありますか?

たむら小児科クリニック院内プレイルーム

田村先生:基本的にはおねしょのある子は、表に出さなくてもかなり気にしている子が多いので、「絶対治る」ということを、本人にわかってもらうのが一番大切だと思います。
逆にお父さんお母さんは一生懸命だけれども、本人は全く気にしない子もいます。その場合はモチベーションを高めるようにしなければいけないですね。おねしょ日記に気に入ったシールをつけたり、ご褒美をあげるなど誉めてあげるようにしています。やる気のある子の方が、早く治ることは間違いありません。夜尿症専門のカウンセラーを置いているのですが、本人のモチベーションを高めることと、絶対治るのだから頑張ろうという励ましをすることで、治療にも大変良い結果を出しています。

―特に心に残っているお子さんはおられますか?

田村先生:茨城には中学2年生になると4泊で船に乗って北海道に行く「船中泊」という行事があります。船内で2泊しますので、その時期になると気にして相談に来られる方が多くなります。そういうお子さんから、夜尿が劇的に止まって「ちゃんと行って来られたよ。」という報告を受けると、とても嬉しくなります。また、通院中はあまり気にしてないようでも、良くなった時「すごく嬉しい」という手紙をもらったときには、夜尿症外来を開いていて、ほんとに良かったと思いました。
夜尿症のお子さんは「おねしょしているのは自分だけなのでは」と思っているかもしれませんが、「おねしょ仲間」はたくさんいます。だから、もっとオープンになれるといいと思います。プライバシーの問題もあってなかなか難しいのでしょうが、おねしょの子もお母さんも、もっとみんなで集まってお話ができればいいなと思っています。「絶対治るから大丈夫ですよ」というのが私からの一番のメッセージです。

*1.抗利尿ホルモン薬:尿を濃くして、尿量を少なくする作用を持ち、点鼻して鼻の粘膜から吸収させる薬
*2.トフラニール、アナフラニール:覚醒反応を刺激し、膀胱が充満した刺激で目を覚まさせやすくする薬