-COPE Trialの論文掲載-T/L型Ca拮抗薬ベニジピンと併用する降圧薬は利尿薬あるいはARBが望ましい

協和発酵キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:松田 譲)が創製した高血圧治療薬「コニール®(T/L型カルシウム(Ca)拮抗薬ベニジピン)」について、降圧薬の併用療法として本剤とサイアザイド系類似利尿薬(以下「利尿薬」)あるいはアンジオテンシン2受容体拮抗薬(以下「ARB」)の組合せが望ましいというCOPE Trialの結果が、高血圧専門の国際的医学雑誌「Journal of Hypertension(電子版)」に掲載されましたので、お知らせいたします。

高血圧治療では、至適な降圧を達成するために、降圧薬を併用する場合が多くあります。降圧療法の基礎薬としてCa拮抗薬が汎用されていますが、Ca拮抗薬と併用する降圧薬の最適な組み合わせは明確ではありませんでした。そこで、日本高血圧学会の後援を受け、山口大学との共同研究(運営委員長:山口大学大学院医学系研究科 器官病態内科学 教授 松﨑益德先生)として高血圧薬物治療研究会(企画代表:大阪大学 名誉教授 荻原俊男先生)大規模臨床研究COPE Trial注1を実施しました。COPE Trialでは、本邦で使用頻度の高いT/L型Ca拮抗薬ベニジピンを基礎薬として、ARB、β遮断薬あるいは利尿薬のいずれかを併用し、降圧目標達成率(収縮期血圧140mmHg未満かつ拡張期血圧90mmHg未満)および複合脳心血管イベント発生率を評価し、その結果、高血圧治療においてベニジピンの併用薬には、利尿薬あるいはARBが有用であることが明らかになりました。

COPE Trialの主要評価項目である、追跡3年後の降圧目標達成率および複合脳心血管イベント注2の発生率は、群間に有意差はありませんでしたが、副次評価項目であるハードエンドポイント注3の発生率は、利尿薬併用群でβ遮断薬併用群に比べ有意に低く(p=0.02)、致死性・非致死性脳血管イベントの発生率も利尿薬併用群でβ遮断薬併用群に比べ有意に低値でした(p=0.01)。また、糖尿病の新規発症率はARB併用群でβ遮断薬併用群に比べ有意に低値でした(p=0.02)。

本研究を主導された高血圧薬物治療研究会代表の荻原俊男先生は、「降圧効果や複合脳心血管イベント発生率は、ベニジピンにARB、β遮断薬、利尿薬のいずれを組み合わせても同様に有用である」としながら、β遮断薬では、副次評価項目の発生率が高いことから「ベニジピンと併用する薬剤は利尿薬またはARBが望ましい」と結論しています。

  • 注1:COPE Trial
    COPE(Combination Therapy of Hypertension to Prevent Cardiovascular Events)Trialは、降圧薬の併用療法を必要とする本態性高血圧患者を対象に無作為に各投与群に振り分け、研究デザインに従って降圧治療を3年以上行った研究です。研究対象者自身はいずれの投与群に属しているかが分かるようになっておりますが、研究のイベント評価は、投与群を知らされていない第3者が行う研究方法(PROBE法)で公正に実施されました。
  • 注2:複合脳心血管イベント
    下記の致死的および非致死的イベントの総和
    突然死、脳血管イベント、心筋梗塞、狭心症の新規発症および再発による入院、心不全の新規発症、心臓突然死、大動脈解離、閉塞性動脈硬化症の新規発症および増悪、腎不全の発症あるいは増悪など
  • 注3:ハードエンドポイント
    心血管死、非致死性心筋梗塞、一過性脳虚血発作を除く非致死性脳血管イベント
研究概要

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研究デザイン 多施設共同ランダム化比較研究
研究期間 2003年4月から2009年11月まで
参加医療機関 710施設
対象患者 治療の有無にかかわらず収縮期血圧140mmHg以上あるいは拡張期血圧90mmHg以上の併用療法を必要する40歳以上85歳以下の本態性高血圧患者
投与群 ARB
併用群
β遮断薬
併用群
利尿薬
併用群
総登録数(計3,501) 1,167 1,166 1,168
解析対象数(計3,293) 1,110 1,089 1,094
主要評価項目 併用療法開始3年後の降圧目標達成率 64.1% 66.9% 66.0%
複合脳心血管
イベント発生率 (#1)
10.4 12.6 8.2
副次評価項目 ハードエンドポイント発生率(#1) 6.3 7.5 3.5(p=0.02,
vs. β遮断薬併用群)(#2)
糖尿病新規発症率 (#1) 5.3(p=0.02,
vs. β遮断薬併用群)(#2)
9.7 8.2
  • #1.年間1,000人あたりの発生数
  • #2.Log-rank検定
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