KW-0761(抗CCR4ヒト化モノクローナル抗体)の 皮膚T細胞リンパ腫を対象とした米国第1/2相臨床試験の結果のお知らせ

協和発酵キリン株式会社(本社:東京、代表取締役社長:松田 譲、以下「協和発酵キリン」)は、2010年12月4日から7日まで米国フロリダ州オーランドで開催された第52回米国血液学会(American Society of Hematology: ASH)において、当社が開発中のKW-0761の米国での第1/2相臨床試験の結果が発表されましたことをお知らせいたします。

KW-0761は、当社独自の強活性抗体作製技術「POTELLIGENT®(ポテリジェント)注1」を用いて作製したヒト化モノクローナル抗体で、CCR4注2を抗原として認識して、標的細胞をADCC注3作用で攻撃します。

発表された演題は、前治療歴のある皮膚T細胞リンパ腫注4を対象とした多施設共同第1/2相臨床試験の内容で、当社米国子会社の協和発酵キリンファーマ注5がスポンサーを務める臨床試験です。本試験では42名にKW-0761が投与されました。第1相臨床試験パートの用量設定試験において、用量制限毒性(DLT)は認められませんでした。第2相臨床試験パートを含む試験全体の有害事象としては、悪心、頭痛、悪寒、発熱、発疹、下痢、背部痛及び嘔吐等が認められましたが、多くは軽度から中程度でありました。有効性はセザリー症候群(SS)注616名及び菌状息肉症(MF)注722名の計38名で評価され、奏効率は3名の完全寛解を含め42%(SS: 50%、MF: 36%)であったことから、前治療歴のある皮膚T細胞リンパ腫に対して有効性が示唆されました。

協和発酵キリンは、がんを重点領域とし、抗体技術を核として画期的な新薬を継続的に創出することで、がん患者さんの治療およびQOLの向上に貢献してまいります。

今回発表した米国第1/2相臨床試験の概要

1. 試験概要

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試験の目的 前治療歴のある末梢性T細胞リンパ腫および皮膚T細胞リンパ腫患者さんにKW-0761を静脈内投与したときの安全性及び有効性を検討する。
試験デザイン KW-0761を0.1 mg/kg、0.3 mg/kg、あるいは1 mg/kgの用量を1週間間隔で4回投与し、2週間観察する。効果がみられた症例、あるいは安定している症例についてはさらに投与を2週間隔で継続する。
目標症例数 47名
主要な評価項目 安全性及び有効性(奏効率等)
2. 発表データの概要

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用量設定 1 mg/kgまでの用量で、用量制限毒性は認められなかった。最大投与量である1 mg/kgが第2相臨床試験パートの用量として選択された。
安全性 42名について安全性を判定した。
有害事象:悪心、頭痛、悪寒、発熱、発疹、下痢、背部痛及び嘔吐等
程度:多くは軽度から中程度
有効性 T細胞リンパ腫を有する38名について有効性を判定した。
疾患:セザリー症候群(SS)16名及び菌状息肉症(MF)22名
奏効率:42%(SS: 50%、MF: 36%) 内訳:完全寛解3名、部分寛解13名
  • 注1. POTELLIGENT® (ポテリジェント)
    当社が独自に確立した高ADCC活性抗体作製技術です。本技術を用いることで、抗体が保有する糖鎖の中のフコースを低下させた抗体を作製できます。本技術で作製した抗体は、従来の抗体に比べて、標的細胞を極めて効率的に殺傷し、高い抗腫瘍効果を示すことが動物試験で確認されています。
  • 注2.CCR4(chemokine (C-C motif) receptor 4)
    CCR4は、白血球の遊走に関与するケモカインの受容体の一つです。CCR4は、正常組織中ではIL-4およびIL-5などのサイトカインを産生する(CD4陽性の)ヘルパー2型T細胞に選択的に発現することが知られています。また、血液がんの一種である末梢性T/NK細胞リンパ腫において高発現しています。
  • 注3.ADCC(Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity(抗体依存性細胞傷害活性))
    抗原に抗体が結合すると、その抗体にマクロファージやNK細胞といったエフェクター細胞が結合します。その後、エフェクター細胞によって抗原を持つ標的細胞が殺傷されます。
  • 注4.皮膚T細胞リンパ腫
    T/NK細胞起源の非ホジキンリンパ腫で、主な病変部位が皮膚である疾患の総称です。
  • 注5.協和発酵キリンファーマ別ウィンドウで開きます
    協和発酵キリンの米国子会社で、ニュージャージー州プリンストンにあり、米国での開発拠点としての役割を担っています。
  • 注6.セザリー症候群(SS)
    皮膚病変を主症状としたT細胞リンパ腫の一種であり、血液中にセザリー細胞と呼ばれる異常リンパ球の出現により診断されます。全身が赤くなり痒みが出現し、発熱とリンパ節腫脹を伴う疾患です。
  • 注7.菌状息肉腫(MF)
    皮膚病変を初発症状とし、病変の主座が皮膚、特に乳頭層浸潤にある末梢性T細胞リンパ腫です。皮膚原発のT細胞リンパ腫では最も一般的で、皮膚のリンパ腫の50%を占めます。
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