遺伝子組換えマウスの不適切な管理について

協和発酵キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:松田 譲、以下「弊社」)は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性確保に関する法律」に基づき、社内規程を定めて研究活動を展開してまいりました。

しかし、弊社東京リサーチパーク(東京都町田市)内の一部の実験において、遺伝子組換えマウスの飼育実数と管理数が合わない事態が発生いたしました。

近隣の住民の皆様をはじめ多数の方々にご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

弊社と致しましては、動物管理体制および報告体制が不十分であったと認識しております。この事態を真摯に反省し、再発防止策を徹底して、信頼回復に努めてまいります。

詳細につきましては以下のとおりでございます。

  1. 概要

    弊社東京リサーチパーク内において、2010年8月4日および8月11日に遺伝子組換えマウス (計2匹)の飼育実数と管理数が合わないことが判明いたしました。

    当研究所は、生きたマウスが研究棟外へ出ることはない構造になっています。マウスの数が合わない理由の可能性として、死亡した遺伝子組換えマウスが入荷時の輸送箱、または、ケージ交換時の床敷き(とこじき)と共に感染性廃棄物の中に紛れて施設外へ出されたことが考えられます。この輸送箱およびケージ交換時の床敷き(とこじき)は再度密閉され、感染性医療廃棄物処理施設まで搬送され、開封されることなく焼却されたことが確認されています。

    このような事態が起こった原因は、弊社従業員が遺伝子組換えマウスの入荷時および取扱時に匹数を計数し、記録を残す作業が徹底されていなかったことにあります。加えて、当該作業に係る作業手順書が作成されておらず、従事者に対する作業手順の指示が徹底されていませんでした。

  2. 経緯
    1. 2010年8月4日確認分
      7月30日に97KDマウス 300匹を購入しました。ケージ分け作業終了後、飼育作業を開始しました。
      8月4日に飼育担当者が各ケージの餌残量と漏水の点検を行った際、ケージラベル記載の管理数より飼育実数が1匹少ないことに気づきました。
    2. 2010年8月11日確認分
      6月25日に97KDマウス 344匹を購入しました。ケージ分け作業終了後、飼育作業を開始しました。8月4日に他のケージでマウス匹数の不足が発生したことから、実験担当者はケージラベル記載の管理数と飼育実数が一致していることを確認しました。8月9日にケージ交換作業を行いました。
      8月11日に飼育担当者が各ケージの餌残量と漏水を点検した際、ケージラベル記載の管理数より飼育実数が1匹少ないことに気づきました。

    8月4日以降、発生した室内、隣接する室内、およびケージ内を捜索、また全ケージのケージラベル記載の管理数と飼育実数の照合を行いました。また、11日以降、実験室および飼育室全てを捜索し、27日には全従業員により研究棟内全域と研究棟周辺の捜索を行いました。機器の内部も解体、あるいはファイバースコープ等を使用し捜索しました。

    この事態について、8月26日に弊社より文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理室・安全対策室に対して第一報を連絡しました。

  3. 発生場所
    弊社東京リサーチパーク 動物実験施設
    (東京都町田市旭町3丁目6番6号)
  4. 当該マウスについて
    本マウスは、抗体遺伝子の一部を欠損した97KDと呼ばれる雌のマウスです。毒性や伝搬性のある外来性遺伝子を発現する動物ではありません。
     本マウスは、抗体を作れないため免疫機能が抑制されており、正常マウスと比較してウイルスや細菌感染に対する抵抗力が弱く、自然環境下では死亡する可能性が高いと考えられます。また、自然環境下での繁殖能力も低いことから、他の生物種を凌駕し、生態系のバランスを破壊する可能性はきわめて低いと考えられます。
     また本マウスは有害物質を産生せず、病原体や薬品なども接種されていません。
  5. 再発防止策
    1. 動物入荷・飼育・廃棄作業の作業手順書を作成しました。
    2. 動物室での飼育作業は二人一組で実施し、飼育実数と管理数の照合のダブルチェック体制をとりました。
    3. 遺伝子組換え動物を扱う実験室に、既設インターロックに加え、ねずみ返し、マウス捕獲器を設置しました。
    4. 緊急の講習会を実施し、遺伝子組換え動物の飼育管理について周知徹底しました。
    5. モニタリングを開始しました。
    当該マウスについては死亡し、処分された可能性が高いと考えています。しかし、死骸が見つかっていないことから、念のため、当該マウスが生物多様性に影響しないことを確認するために敷地内にマウス捕獲装置を設置し、2011年8月までモニタリング調査を実施いたします。
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