持続可能な社会の形成に向けた取り組み

協和キリングループは、事業継続の前提である地球環境の保護に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現に向けた活動を進めています。マテリアリティの中でも特に気候変動(温暖化の防止)および水資源の保護に係るSDGsを中核的な課題として位置付け、事業活動を進めるなかで同時にこれらに係る取り組みを進め、継続的な環境負荷の低減を推進しています。

気候変動の緩和と適応

方針・戦略

協和キリングループは、気候変動による影響が事業継続のリスクや機会となることを認識しており、経営上の重要な課題の一つとして位置付けています。パリ協定の脱炭素社会への変革をはじめとするグローバルな社会からの要請を踏まえ、当社グループはCO2削減に取り組んでいきます。

気候変動に対する協和キリングループの方針は、「協和キリングループ 環境基本方針」に掲げられており、具体的には「省資源、省エネルギーを推進し、温室効果ガス排出量を削減することにより、地球温暖化防止」と明記しています。

また、キリングループでは、社会と企業のレジリエンス強化へ向けた新たな長期戦略として、2020年に「キリングループ環境ビジョン2050」を策定しました。一緒につくりたい2050年の社会「気候変動を克服している社会」のもとに、キリングループ全体で2050年にバリューチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにする目標を掲げ、脱炭素社会構築に向けてリードしていくためにステークホルダーとともにGHG排出量の削減に取り組んでいます。より具体的な中長期目標として、キリングループ全体で2030年のGHG排出量を2019年比50%削減(Scope1+2)するとともに、RE100へ加盟し、2040年までに使用電力の再生可能エネルギー100%化の達成を掲げ、キリングループ全体で各種施策を展開しています。
協和キリングループにおいても、「気候変動を克服している社会」の実現のために、キリングループと同様に2050年にバリューチェーン全体のGHG排出量ネットゼロにする目標を掲げ、より具体的な中長期目標として、2040年までに使用電力の再生可能エネルギー100%化の達成、並びに、2030年CO2排出量の2019年比55%削減を掲げました。
協和キリングループはキリングループとしてグループネットワークを活用し、事業特性を生かした気候変動施策を積極的に展開することにより、「気候変動を克服している社会」の実現に向けて貢献していきます。

さらには、協和キリングループは2030年に向けた新たなビジョンを掲げています。この新ビジョンの実現に向け、2021-2025年中期経営計画として「社会からの信頼獲得」を戦略の一つとして設定しており、その施策として、「地球環境の保全への貢献」を掲げています。気候変動に関する具体的なコミットメントとして、設備投資を含む「省エネ」と「再生可能エネルギーの拡大」を中心とした早期の「CO2排出量削減の推進」および「エネルギー転換の推進」を挙げ、取り組んでいきます。

気候変動
気候変動を克服している社会

バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロにします

  • 早期にRE100を達成するとともに、自社の使用エネルギーを100%再生可能エネルギー起源にします
  • バリューチェーン全体の炭素排出量をネットゼロにします

脱炭素社会構築に向けリードしていきます

  • お客様をはじめとしたステークホルダーと共に、脱炭素社会に寄与するビジネスモデルを構築します
  • 気候変動を緩和する研究を助成し、責任ある再生可能エネルギーを社会に広げます

「キリングループ環境ビジョン2050」を実現するための取り組み

指標および目標

「気候変動を克服している社会」に向けて(~2050年)

2030年目標
目標 CO2(SCOPE1+2)排出量を55%削減
目標年 2030
基準年 2019
基準年における実績 51,931 t-CO2
対象範囲 グローバル
2030年まで

当社グループはキリンホールディングス株式会社と連携しScience Based Targets(SBT)に基づき、医薬事業(協和キリングループ)とバイオケミカル事業(協和発酵バイオグループ)を合わせた指標として、2030年CO2排出量削減目標「2015年度比20%削減、2030年度CO2排出量:289千トン以下にする」を策定し、取り組んできました。しかし、気候変動への深刻さが増すなか、気候変動に対する社会的要請に対応するために、本目標を2021年に見直しました。SBT1.5℃目標に基づく新たな指標として、協和キリングループ単独目標「2019年比55%削減」を策定しました。さらに本目標達成に向けたロードマップを策定し、短期目標(2024年度CO2排出量:2019年比51%削減)も設定しました。

短期目標
目標 CO2(SCOPE1+2)排出量を51%削減
目標年 2024
基準年 2019
基準年における実績 51,931 t-CO2
対象範囲 グローバル

2030年までは、設備投資を含む継続的な省エネ活動を推進しつつ、使用エネルギーの大部分が電気であるという事業特性を生かし再生可能エネルギーの導入拡大を加速し、効果的なCO2排出量の削減を実現すると共に、毎年、ロードマップを見直し各種施策の効果を検証し、目標達成を実現します。具体的には当社グループは以下の施策を実施していきます。

  • 省エネタイプの空調設備の導入、新棟への最新省エネ設備の導入、スポット空調導入といった設備面での改善や設備投資と共に、冷凍機制御や空調管理等のソフト面での改善も図ります。
  • 2025年までに国内主要事業場へ、使用電力の再生可能エネルギーへの転換を順次進めていきます。2030年までには、海外サイトや国内の支店営業所等も含めた当社グループ全事業場への再生可能エネルギーの導入・拡大を計画しています。
  • 2023年3月には宇部工場にオンサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)モデルによる大規模太陽光発電設備を導入し、稼働しています。
エネルギー種毎のCO2排出量割合と再生可能エネルギー導入によるCO2排出量削減推移(2019年)電気66% 都市ガス26% 灯油6% 蒸気1% 天然ガス1% その他1% (2023年予想)2020年より順次、高崎工場、富士事業場、宇部工場の購入電力の100%を再エネに変更
宇部工場 オンサイトPPAモデルによる大規模太陽光発電設備

単年度目標(2022年度実績)

2022年は、2030年目標※1の達成に向けたCO2排出量の削減と、エネルギー原単位の前年比1%以上の削減を目指して活動しました。
2022年には富士事業場に再生可能エネルギーを導入し、大幅なCO2排出量の削減を実現しています。
この詳細については、後述する、「具体的な取り組み 再生可能エネルギー導入の促進」をご覧ください。
さらに、事業場ごとに単年度のエネルギー原単位削減目標を設定し、生産効率向上の施策を展開しています。2022年度のエネルギー原単位は、生産設備増強並びに製造量増加等の影響により、前年比2.2%増(グローバル目標:前年比1%減)でした。
なお、当社は省エネ法における特定事業者であり、エネルギー原単位年平均1%削減の努力義務がありますが、省エネ法の事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)において、4年連続でSクラス評価(目標達成)を維持しています。
なお、CO2排出に関する各種データは、ESGデータ集に掲載しています。

2018年:55,002t-CO2(Scope 1:18,262t-CO2、Scope 2:36,740t-CO2) 連結売上高原単位:20.3億円/2019年:51,931t-CO2(Scope 1:17,244t-CO2、Scope 2:34,687t-CO2) 連結売上高原単位:17.0億円/2020年:41,074t-CO2(Scope 1:17,185t-CO2、Scope 2:23,889t-CO2) 連結売上高原単位:12.9億円/2021年: 38,299t-CO2(Scope 1:21,897t-CO2、Scope 2:16,402t-CO2)/2022年: 30,162t-CO2(Scope 1:13,941t-CO2、Scope 2:16,221t-CO2) 連結売上高原単位:7.6億円/2030年目標:23,369t-CO2
CO2排出量(scope1+2)と原単位の推移※1,2
CO2排出量(scope1+2)削減の進捗状況※1
目標 55%削減
目標年 2030
基準年 2019
基準年における実績 51,931 t-CO2
2022年実績※3 30,162 t-CO2
基準年に対する削減率 42%削減
  1. ※1協和キリングループの生産研究事業場を対象としています。
  2. ※2原単位の算出には、IFRSの連結売上高を使用しています。
  3. ※3SGSジャパン株式会社による第三者保証を受けています。
2050年まで

上記、2030年までの対応を継続すると共に、化石燃料からのエネルギー転換を推進し、バリューチェーン全体でのCO2排出量ネットゼロを目指します。

CO2排出量の削減イメージ 省エネ×再エネ拡大×エネルギー転換 CO2排出量を2019年から2050年にかけて削減を目指す。2020年に高崎工場への再エネ(アクアプレミアム)導入 2030年に再エネ導入・拡大および省エネの推進 2050年にバリューチェーン全体でネットゼロを目指す。
バリューチェーンでのネットゼロに向けたイメージ

具体的な取り組み

再生可能エネルギー導入の促進

協和キリンでは、再生可能エネルギーの利用を促進するため、2011年から太陽光発電設備の導入を進めています。2022年現在は、東京リサーチパーク、富士事業場、宇部工場、高崎工場で稼働しています。2022年の発電量は92千kWhで、CO2換算で42.0トン※1に相当します。
2023年3月には宇部工場へのオンサイトPPAモデルによる大規模太陽光発電設備(1.47MW)が導入・稼働しており、CO2排出量削減を加速させることが期待されます。
一方、2020年以降、RE100適合の再生可能エネルギーを高崎工場、富士事業場に順次導入し、各事業場の電力を100%、再生可能エネルギーに切り替えてきました※2,3。2023年4月には宇部工場にも導入し、当事業場の電力の100%をRE100適合の再生可能エネルギーに切り替えました※4。これらの再生可能エネルギーの導入により、協和キリングループの年間消費電力量約70,900千kWhのうち約60,300千kWhがCO2排出量ゼロの再生可能エネルギー由来のものに切り替わり、当社グループの年間CO2排出量の約53%(27,300t)が削減される予定です※5。なお、2021年には、本社の電力(100%)もRE100 適合再生可能エネルギーが導入されています※6

2030年目標達成に向け、再生可能エネルギーの早期導入・拡大を強力に推進していく予定です。
今後、2025年までに国内主要事業場への、2030年までに海外サイトや国内支店営業所等も含めた当社グループ全事業場の購入電力を100%再生可能エネルギーに切り替える予定です。さらに、国内生産・研究事業場や、海外生産事業場への太陽光発電設備の導入も検討しています。

  1. ※1電力購入した場合の間接排出量として換算
  2. ※2ニュースリリース:医薬品製造業界初の「アクアプレミアム」導入
  3. ※3ニュースリリース:協和キリン、富士リサーチパーク・CMC 研究センターへ「アクアプレミアム」導入~協和キリングループとして、年間CO2排出量約39%削減へ~
  4. ※4ニュースリリース:協和キリン、工場2拠点、研究所3拠点の全ての購入電力に RE100 基準の再生可能エネルギーを導入pdfが開きます
  5. ※5協和キリングループの国内および海外の生産・研究事業場の2019年度実績値を基に算出
  6. ※6協和キリン本社が入居するビル「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」では、「RE100」に適合する再生可能エネルギー由来の電力が導入されています。
2018年度:132千kwh/2019年度:135千kwh/2020年度:131千kwh/2021年度: 129千kwh/2022年度: 92千kwh
太陽光発電設備による発電量の推移

営業車のハイブリッドカーへの切り替え

協和キリングループでは、2009年から順次、営業車両を従来の低排出ガス認定車からハイブリッドカーへ切り替えを進めてきました。その結果、2019年以降、国内の新規導入営業車両(社有車)には全てハイブリッドカーを採用しており、2022年現在でハイブリッドカー導入率は99.2%に達しています。営業活動に使用する燃料を抑えるとともに、Webによる面談や説明会・講演会の実施など新たな情報提供活動の実施により、CO2排出量の大幅な削減を維持しています。これからも、より高効率で環境負荷の少ない車両への切替えを継続すると共に、情報提供活動と環境負荷との関わりを考え、低炭素企業グループの実現に向けた取り組みを進めていきます。

2018年度(ハイブリッドカー導入率:92.0%、CO2排出量:2,616 t-CO2 /2019年度(ハイブリッドカー導入率:91.7%、CO2排出量:2,355 t-CO2 /2020年度(ハイブリッドカー導入率:92.9%、CO2排出量:1,524 t-CO2/2021年度(ハイブリッドカー導入率:96.9%、CO2排出量:1,913 t-CO2/2022年度(ハイブリッドカー導入率:99.2%、CO2排出量:1,790 t-CO2
営業車から排出されるCO2排出量とハイブリッドカー導入率

グリーン・オフィス・プランの推進

協和キリングループでは、ISO14001活動として、下記の項目を事務部門共通の環境配慮活動とし、本社、生産・研究事業場、販売事業場を中心に、労働組合、総務部門、調達部門等と協力して取り組んでいます。その結果、2022年度のグリーン購入比率は96%となり、目標を達成しています。購買システムの変更により、環境配慮製品の購入をより積極的に促進する仕組みを導入しています。また、2020年度以降、COVID-19の感染拡大状況も踏まえつつ、テレワーク等の働き方の最適化を継続的に検討・展開してきました。その結果、2022年度は、社員一人当たりの電気使用量は前年比で4.0%削減となりました。一方、コピー用紙使用量は過去3年平均値対比で13%削減と大きな効果を生むことが出来ました。今後も、働き方改革を進め、継続的に取り組みを進めていきます。

グリーン・オフィス・プラン目標
  • 電気使用量原単位1%/年 削減
  • グリーン購入比率90%以上
  • コピー用紙使用量原単位1%/年 削減(過去3年平均値対比)

公共規制への対応と支持

当社は国内・海外の各拠点において気候変動やエネルギー使用量削減などに関する法律や規制(国内の場合は「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」や「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」など)や政策等を支持し、これらへの対応を適切に行っています。
また、当社は省エネ法における特定事業者であり、エネルギー原単位年平均1%削減の努力義務があります。毎年、事業場毎にエネルギー原単位削減目標を設定し、各種省エネ施策を展開することによりエネルギー原単位の削減を達成しています。省エネ法の事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)においては、4年連続でSクラス評価(目標達成)を維持しています。

業界団体・イニシアチブとのかかわり

業界団体

当社は日本製薬団体連合会とその傘下にある日本製薬工業協会に加盟しています。日本製薬団体連合会と日本製薬工業協会は、日本経済団体連合会が取り組む「カーボンニュートラル行動計画(旧 低炭素社会実行計画)」に参画しています。当社は、「カーボンニュートラル行動計画」の趣旨に賛同し、2030年を目標年とする「カーボンニュートラル行動計画(フェーズⅡ)」に参加しています。
また、日本製薬団体連合会に設置されたカーボンニュートラル行動計画ワーキンググループ(旧 低炭素社会実行計画ワーキンググループ)に委員としても参加し活動しています。さらには日本製薬工業協会に設置された環境問題検討会にも委員として参加し、これらの活動を通じて、CO2排出削減目標の策定など、気候変動問題に関する業界団体としての政策提言に当社の意見を反映させるなど、間接的に行政へと働きかけを行っています。
当社は、気候変動戦略において業界団体の立場と一貫性を持たせるため、気候変動に関する経済産業省、環境省、厚生労働省などの政府系主催のセミナーや、業界団体主催のセミナー等に参加し情報収集すると共に、各種関連団体等に委員として参画し気候変動に関して討議し、それらの内容を社内に共有しています。さらに、その内容について、当社の立場・考えに沿っているかを確認しており、また齟齬がある場合は、当社環境管理担当部門で協議したのち、代表取締役副社長を委員長としたグループCSR委員会を通じて調整を図ります。このプロセスを通じて、当社の気候変動戦略と業界団体との活動を一致させています。

  • カーボンニュートラル行動計画が策定した目標は以下の通りです。
    フェーズⅡ:2030年度の二酸化炭素排出量を、2013年度排出量を基準に46%削減する。
イニシアチブ

2020年、キリンホールディングス株式会社はRE100に加盟し、2040年までに使用電力の再生可能エネルギー100%化することにコミットしています。当社グループの気候変動に関する施策は、キリンホールディングスと整合しており、当社グループでも、同目標の達成へ向け、再生可能エネルギー導入に取り組んでいきます。また、キリンホールディングス株式会社はSBTイニシアチブによる「SBTネットゼロ」の認定を、2022年7月に世界の食品企業として初めて取得しました。「キリングループ環境ビジョン2050」で掲げる「2050年までにバリューチェーン全体のGHG排出量をネットゼロにする」長期目標が、パリ協定が求めるGHG排出削減の水準と整合した科学的根拠に基づいた目標であるとして認定されました。また、「SBT1.5℃目標」の認定も取得しています。当社グループの2030年度目標もまたこれらの内容と整合し、設定されています。

  • 電力の再生可能エネルギー100%化を目指す企業で構成される国際的な環境イニシアチブ。

Assembly Bill No. 1305(カリフォルニア州法 議会法案1305号)に関する情報開示

水資源管理

方針・戦略

水は医薬品の製造によるモノづくりには欠くことのできない重要な資源です。その一方で、気候変動などの問題と絡み合って地球規模での水循環異常が干ばつや洪水といった地域災害を引き起こします。

協和キリングループでは、キリングループ環境ビジョン2050の一緒につくりたい2050年の社会として描いた「持続可能な水資源を利用している社会」のもと、「協和キリングループ 環境方針」に基づき、節水や水源の保全に取り組んでいます。

水資源
持続可能な水資源を利用している社会

原料として使用する水を持続可能な状態にします

  • グループ拠点における水使用量の削減を継続します
  • 日本国内の水源の森活動をさらに推進します

事業拠点の流域特性に応じた水の課題を解決します

  • サプライチェーンの強化・効率化により水災害時のリスクを最小化します
  • 原料生産地で水源地保全活動および水を大切にする教育を実施し、バリューチェーンにおける水の課題を解決します

「キリングループ環境ビジョン2050」を実現するための取り組み

リスク管理

水リスクへの対応

協和キリングループでは、国内外の各生産事業場(5事業場)における水使用実態、水リスク評価ツール(WRI AqueductおよびWWF Water Risk Filter)ならびにインターネット調査及びアンケート調査に基づく、水リスク評価(水不足・水ストレス、洪水、水源の水質汚濁のリスク評価)を実施し、生産事業場ごとの水リスクを5段階で評価しています。

その結果、宇部工場(山口県)ならびに協和麒麟(中国)製薬有限公司(上海)で、他の生産事業場と比較してリスクが高いことが判明(5段階評価で4)しました。宇部工場では取水している厚東川において渇水が頻発していること、工場が立地する宇部市が作成したハザードマップで高潮により最大5mの浸水が予想されています。また、協和麒麟(中国)製薬有限公司では、工場が立地している上海における水不足リスクに加え、インフラが弱く洪水リスクも高いことなどがその理由として挙げられました。一方、当社の基幹工場である高崎工場については、国土交通省が発表している最新の地点別浸水シミュレーションにより、浸水の被害が想定されています。

これらの結果を受け、事業場の大規模自然災害BCPの見直し・策定などのソフト対策に加え、浸水防止措置(生産に関する重要資産の地理的分散保管、建物の防水化、重要設備の高層・高所配置化、防潮堤設置)など設備自体の災害への対策を実施するなどハード面での対応を展開することにより、これらのリスクの回避・最小化を図っています。

なお、水リスク評価で水不足・水ストレスが高いと判定された宇部工場、及び協和麒麟(中国)製薬有限公司における2022年度の取水量は96千トンであり、これは協和キリングループの総取水量1,489千トンの約6.4%に相当しています。ただし、これらの事業場では、事業に必要な良質な淡水を持続可能な状態で取水しており、水不足・水ストレスによる事業活動への影響は受けてはいません。

  • 水リスク評価結果

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事業所名 水不足・
水ストレス
洪水 水源の
水質汚濁
総合リスク
高崎工場 Low Low Very Low Low
富士事業場 Medium Very Low Very Low Low
宇部工場 High High Very Low High
協和麒麟(中国)製薬有限公司 High High Low High
協和医療開発(株) Low Low Very Low Low

評価指標:Very High, High, Medium, Low, Very Low

指標および目標

具体的な節水活動を推進するため、これまで医薬事業(協和キリングループ)とバイオケミカル事業(協和発酵バイオグループ)を合わせた指標として、2030年水使用量(取水量)削減目標「2015年比30%削減」を設定し取り組んできました。今後、より事業特性に合わせた施策を展開し、取水量の削減を達成していくため、医薬事業のみで取水量を管理していくこととし、2021年に新たに協和キリングループ単独の2030年取水量削減目標として「2019年比40%削減」を策定しました。
なお、毎年、事業場毎に取水量原単位目標を設定し管理することにより、水使用の効率化も図っています。2022年は、協和キリングループとして取水量原単位を前年比9.7%削減しています。

2030年目標
目標 取水量を40%削減
目標年 2030
基準年 2019
基準年における実績 2,229千m3
対象範囲 グローバル

具体的な取り組み

水の効率的な利用

協和キリングループでは、製造工程における水使用の効率化に取り組んでいます。水の循環的利用や、再利用等により、取水量削減に向けて取組みを進めています。具体的には冷却塔冷却水の水質改善および排水ブロー設定値の変更・最適化、スクラバー補給水設定の適化などを実施しています。

2018年:2,325千立方メートル、2018年連結売上高原単位:0.86億円/ 2019年:2,229千立方メートル、2019年連結売上高原単位:0.73億円/2020年:1,746千立方メートル、2020年連結売上高原単位:0.55億円/ 2021年:1,673千立方メートル、2021年連結売上高原単位:0.47億円/ 2022年:1,489千立方メートル、2022年連結売上高原単位:0.37億円/ 2030年目標:1,337千立方メートル)
取水量の推移※1,2
取水量削減目標と進捗状況※1
目標 40%削減
目標年 2030
基準年 2019
基準年における実績 2,229千m3
2022年実績※3 1,489千m3
基準年に対する削減率 33%削減
  • ※1協和キリングループの生産・研究事業場を対象としています。
  • ※2原単位の算出には、IFRSの連結売上高を使用しています。
  • ※3SGSジャパン株式会社による第三者保証を受けています。

適切な排水管理

2022年には1,139千m3の排水が発生しました。うち、1,013千m3の水が河川に排水されています。河川へ排水する際には、管轄行政の排水基準よりも厳しい自主管理基準を設定し、有害な物質や高負荷の排水が排出されることが無いよう、常時監視しています。具体的には、協和キリングループでは、製造プロセスの改良や排水処理施設への設備投資を積極的に行い、排水の水質汚濁指標である、COD(化学的酸素要求量)、窒素、リンを削減する努力を続けています。排水種毎の排水処理の最適化や処理状況のモニタリング、金属含有排水を抜き取り産廃処理することで排水中の高負荷物質・有害物質等の排出を防止し、水質汚濁防止に努めています。

なお、2022年において、取水や排水など水関連の規制違反により、罰金、法的命令、その他のペナルティを課された事例はありません。

2000年度(COD排出量:11.6トン、全窒素排出量8.8トン、全リン排出量:0.54トン)/2017年度(COD排出量:1. 9トン、全窒素排出量4.3トン、全リン排出量:0.35トン)/2018年度(COD排出量:2.4トン、全窒素排出量4.0トン、全リン排出量:0.34トン)/2019年度(COD排出量:2.3トン、全窒素排出量4.0トン、全リン排出量:0.51トン)/2020年度(COD排出量:2.6トン、全窒素排出量5.3トン、全リン排出量:0.57トン) /2021年度(COD排出量:2.8トン、全窒素排出量3.9トン、全リン排出量:0.49トン)/2022年度(COD排出量:2.1トン、全窒素排出量3.9トン、全リン排出量:0.55トン)
COD・全窒素・全リン排出量の推移※1
  • ※1協和キリングループの国内生産・研究事業場を対象としています。

廃棄物排出量削減への取り組み

ガバナンス

協和キリングループでは、廃棄物ガバナンス体制を強化し、資源循環を推進しています。

廃棄物処理委託契約時の監査に加え、定期的な委託先の監査を行い優良処理事業者であるかどうかをチェックし、不法投棄の防止、資源循環の促進に結び付けています。継続的な廃棄物管理担当者の教育の実施等、グループ全体で廃棄物ガバナンスに対する意識向上に努めています。今後も有効で確実なガバナンス体制の構築を進めていきます。

指標および目標

ゼロエミッション活動

2022年の協和キリングループ国内全体※1の廃棄物発生量は1,273トンでした。また、最終埋立処分量0.4トン、廃棄物発生量に対し0.03%となり、ゼロエミッション※2を継続達成しました。今後も継続的に最終埋立処分率の低減を推進していきます。

2018年:1,427t(廃棄物発生量)、 0.109(最終埋立処分率)、0.1%(最終埋立処分率 目標値)2019年:1,160t(廃棄物発生量)、 0.091(最終埋立処分率)、0.1%(最終埋立処分率 目標値)2020年:1,408t(廃棄物発生量)、 0.004(最終埋立処分率)、0.1%(最終埋立処分率 目標値)2021年:1,277t(廃棄物発生量)、 0.002(最終埋立処分率)、0.1%(最終埋立処分率 目標値)2022年:1,273t(廃棄物発生量)、 0.003(最終埋立処分率)、0.1%(最終埋立処分率 目標値)
廃棄物発生量と最終埋立処分率の推移※1
工場排出量:1,273トン(外部再資源化量:893トン、外部減量化量380トン) 最終埋め立て処分量:0.4トン
廃棄物の再利用・処分の全体フロー(2022年度)※1
  • ※1国内協和キリングループの生産・研究事業場を対象としています。
  • ※2ゼロエミッションは、協和キリングループでは、最終埋立処分量を廃棄物発生量の0.1%以下にすることを意味します。

PCBの適正処理

PCBの適正処理については、過去に使用したコンデンサー、トランス、遮断器、照明安定器を特別管理産業廃棄物保管基準に従って地下浸透防止を施した倉庫に施錠し保管すると共に、法令に従い処分を実施し、2021年に全ての対象物について期限内に処理が完了しています。

PCB(ポリ塩化ビフェニル類)対応
コンデンサー・トランス・遮断器 0台
照明安定器 0台
低濃度PCB油 0 L

(2022年12月末保管量)

化学物質排出量削減への取り組み

指標および目標

化学物質排出量削減については、協和キリングループでは揮発性有機化合物(VOC)の排出量削減を中心に活動を行ってきました。

その結果、2020年時点で協和キリングループ国内全体のVOCの排出量は、0.07トンと非常に低いレベルを維持しております。今後もVOCを使用しないプロセスへの改良、VOCを用いる新規設備ではより高効率なVOC除去設備を設置することなどを行っていきます。

2022年の協和キリングループ国内全体のPRTR法第1種指定化学物質の総排出量は、0.04トン(前年度:0.03トン)と低いレベルを維持しています。PRTR法第1種指定化学物質以外の化学物質についても、関連法規制を遵守し、適切な管理を行っています。引き続き、化学物質排出抑制に取り組みます。

VOC、PRTR対象物質排出量等

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指標 単位 対象範囲 2019年 2020年 2021年 2022年
VOC排出量 t 国内 0.05 0.07 0.04 0.09
VOC排出原単位 t/
千億円(売上収益)
グローバル 0.01 0.02 0.01 0.02
オゾン層破壊物質(ODS)放出量 t 国内 0.005 0.003 0.018 0
PRTR対象物質排出量 t 国内 0.02 0.03 0.03 0.04

なお、PRTR法第1指定化学物質排出量に関する詳細は、ESGデータ集に掲載しています。

大気汚染防止への取り組み

指標および目標

協和キリングループでは、ボイラーなどに使用する燃料の転換や設備投資を積極的に進め、排気の大気汚染指標である、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじんの排出量を低いレベルで維持しています。

2000年:7.2t(SOx)、19.9t(NOx)、8.1t(ばいじん)2017年:0.5t(SOx)、9.1t(NOx)、0.06t(ばいじん)2018年:0.4t(SOx)、7.5t(NOx)、0.09t(ばいじん)2019年:0.3t(SOx)、6.2t(NOx)、0.09t(ばいじん)2020年:0.3t(SOx)、5.5t(NOx)、0.09t(ばいじん)2021年:0.3t(SOx)、4.3t(NOx)、0.07t(ばいじん)2022年:0.3t(SOx)、4.6t(NOx)、0.07t(ばいじん)
SOx・NOx・ばいじん排出量の推移※1
  • ※1協和キリングループの国内生産・研究事業場を対象としています。

生物多様性保全への取り組み

具体的な取り組み

水のめぐみを守る活動

いのちの連関を支える水資源を守ることは、生態系を維持し、生物多様性を守ることにつながります。

協和キリングループでは、生態系を維持し、生物多様性を守る活動として2007年度からキリングループの水のめぐみを守る活動に取り組んでいます。医薬品製造の主力工場である高崎工場ならびに宇部工場で、毎年、水源の森づくり活動として、下草刈りや間伐作業を実施しています。なお、高崎工場では、群馬県、財団法人 倉渕ふるさと公社との間で協定を結び、三者協働のもと高崎市倉渕町の保安林において「協和キリン高崎水源の森づくり」活動を継続しています。なお、本活動を10年以上にわたり継続していることが、群馬県の緑豊かな森林を守り育てる取組みとして評価され、2018年に群馬県環境賞(環境功績賞)を受賞しました。

水源の森づくり活動の様子

生物多様性を守る活動

協和キリングループでは、事業場毎に河川の清掃(黄瀬川・静岡、境川・東京)、あまごの稚魚放流(桃沢川・静岡)、「秋吉台の草原を守り・育む活動(秋吉台・山口)」など、その地域の方々とともに生態系を守る活動に取り組んでいます。富士事業場では、隣接する黄瀬川の清掃活動を、静岡県の「リバーフレンドシップ制度」という枠組みの中、沼津土木事務所、長泉町と協働のもと継続しています。また、東京リサーチパークでは、「キリングループ プラスチックポリシー別ウィンドウで開きます」に基づく課題解決への貢献活動として、近隣の境川の清掃活動(境川クリーンアップ作戦)に協賛企業として参加しています。今後もこれらの活動を通じて、地域コミュニティの育成と自然環境美化・保全の意識向上につなげています。

河川の清掃活動の様子

原材料・試料の採集地の住民へのアクセスと利益分配については、「キリングループ遺伝資源アクセス管理ガイドライン」を遵守して対応しています。

また、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」を順守するため、社内に委員会を設け、適切な管理を行っています。

森林を守る活動

協和キリングループでは、キリングループ持続可能な生物資源利用行動計画における宣言「紙製容器包装は、2030年までに持続可能性に配慮されたことが確認された紙を100%使用します。その他の紙は、持続可能性に配慮したことが確認された紙、または古紙を使用します。」のもと、FSC®認証製品の導入を進めています。

協和キリンでは、資材調達において、社用封筒、会社案内パンフレット、製品包装段ボール箱などにFSC®認証製品を導入することにより、世界の森林を健全にすることに貢献しています。2021年に改訂された「キリングループ持続可能な生物資源利用行動計画」に従い、国内製品包装段ボール箱のFSC®認証製品導入の拡大、製品内箱などへのFSC®認証製品の採用も継続して検討しており、海外の事業場・製品等へのFSC®認証製品の導入についても検討を開始しています。

  • FSC®(Forest Stewardship Council® 森林管理協議会)認証とは、環境保全の点から見て適切で、社会的な利益に適い、経済も継続可能な、責任ある管理をされた森林や、林産物の責任ある調達に対する国際的な認証制度です。

協和キリンはFSC®プロモーションライセンスを取得しています(FSC® N003037)。

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