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おもしろバイオ基礎講座

遺伝子研究で何が可能になるの? ->説き明かされる遺伝子と病気の関係

2001年3月6日号に掲載


病気の遺伝子がわかってきた


ある特定の遺伝子を見つけることを「遺伝子ハンティング」と呼んでいます。遺伝子ハンティングによって、病気に関連する遺伝子が次々と見つかってきています。
日本で約3000万人の患者がいると言われる高血圧に関係の深い遺伝子も見つかっています。アンジオテンシノーゲン遺伝子(AGT)です。AGTは肝臓で血圧の上昇に関係の深いアンジオテンシノーゲンという糖タンパクをつくります。1992年に米仏の研究者がAGTの異常によって高血圧が起こることをつきとめたのです。
日本の研究者が日本人のどれくらいがこの遺伝子の異常を持っているかを調べました。その結果、驚くべきことに、約96%もの日本人が持っていることがわかったのです。遺伝子からみると、日本人は「高血圧人」というわけです。
でも、この遺伝子の異常がある人がすべて高血圧になってしまうわけではありません。また、AGTの異常がなくても高血圧になる人もいます。AGTのほかにも10数種類の「高血圧遺伝子」が見つかってきています。
このように、いくつかの遺伝子が関係して起こる病気を多因子遺伝子病と言います。
高血圧のほかにも糖尿病、心筋梗塞、がんやアルツハイマー病などほとんどの病気が多因子遺伝子病と言えます。また、多因子遺伝子病の多くは遺伝的な要因だけでなく、食事、運動や喫煙など生活習慣やライフスタイルも大きく関係していることが明らかになってきています。
「3日でわかる遺伝子」(ダイヤモンド社)より
では、1つだけの遺伝子の異常で起こる病気はあるのでしょうか。従来から「遺伝病」と呼ばれてきた血友病などはたった1つの遺伝子の異常で起こりますので、単一遺伝子病と呼ばれています。このほかに、
ハンチントン病やフェニルケトン尿症、デュシャンヌ型筋ジストロフィーなども単一遺伝子病であることがわかってきています。
もう少し、遺伝子と病気の関係を具体的にみていきましょう。
がんは遺伝するのでしょうか。答えは「イエス」でもあり、「ノー」でもあるのです。「イエス」というのは、遺伝性のがんもあるからです。遺伝性のがんは「家族性大腸がん」など「家族性○○がん」と呼ばれているがんです。がん遺伝子はこれらの家系の人の遺伝子を分析することで発見されることがよくあります。日本人が見つけたがん遺伝子のBRCA1とAPCもそうです。BRCA1は乳がん遺伝子で、APCは大腸がんの遺伝子です。
でも、一般的にはがんは遺伝するものではありません。がんは「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」の異常によって発症するのです。
「がん遺伝子」というと、がんを起こす遺伝子で、「がん抑制遺伝子」は、がんを抑える遺伝子というイメージがありますが、そうではないのです。どちらも、細胞の増殖を制御している遺伝子で、「がん遺伝子」は細胞を増殖させ、「抑制遺伝子」は細胞の増殖を抑えているのです。ですから、この2つの遺伝子のバランスが保たれていると、細胞の増殖は正常ですが、どちらかが異常になってしまうと、細胞がコントロールを失って無制限に増殖してしまう、つまり、がんになってしまうのです。その異常を引き起こすのが、食べ物やたばこ、食品添加物、環境汚染物質などの化学物質、放射線などです。がんも生活習慣病に分類されるのはこのような背景があるからです。

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