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藤尾 達郎(協和発酵研究本部リサーチフェロー/工学博士/東大客員教授)

このコーナーは第1木曜日と第3木曜日に新しくなります。
1.1953年は生物学にとって記念の年
元は同じ菌であったものが、より優(すぐ)れた性質を持つようになり、その性質が親から子に受け継(つ)がれるのはどうしてなのかというのは、長い間わかりませんでした。親から子にいろいろな性質が伝わることを「遺伝(いでん)」ということは知っていると思います。この遺伝の仕組みが分かったことによって、1953年は、「生物学」にとって記念すべき年になりました。
この年、ワトソンという人とクリックという人が協同で、人の外見や性質の特徴は「遺伝子」により決められていること、この遺伝子が親から子に伝わることによって、特徴が伝わることを証明しました。先ほどの例で言えば、パン酵母(こうぼ)の遺伝子は長い年月の間に遺伝子の一部がパンつくりに適した性質をもつ遺伝子に変化し、その変化した遺伝子が親から子に伝わることによって、元の酵母菌から少しずつ変化していきました。それが現在のパン酵母になり、パン酵母は元の酵母菌とも、日本酒つくり用に変化した酵母菌とも違った性質を持つようになったわけです。
 
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遺伝子が変われば微生物だけではなく、動物も植物もあらゆる生き物の性質が変わります。特に、微生物は現在の科学の力を用いて、このように変えたいと思う性質につくり変えることが他の生き物に比べてずっと簡単です。この特徴を活(い)かして、目的のものをたくさんつくる性質を持った微生物をつくり出して、生産に使っているのです。<つづく>
 
☆次回は(2月5日号)に続きます。遺伝子を変化させる方法、遺伝子が変化した微生物の中から優れた性質を持った微生物を選び出す方法などについて話をします。

* バイオ関連の先端研究は日々発展し続けております。本サイト内に記載された内容は全て記載日での公開研究情報に基づく内容となっております。